ティックーン

<容器の破壊>はベンヤミンが好んで用いた比喩である。光と闇による「世界の修復」が常に想定されるユダヤ神秘主義にとって、<容器の破壊>(シェビラー)は必要条件である。めざすところは<空処>(ボフー)の表象する<平安>である。理想化された<容器の破壊>という状態は、<修正>(ティックーン)を要請する。
<容器の破壊>は容器が空であることからはじまる。人間の行うティックーンとは、神話の容器の破壊のときに注がれた光を模して、<殻>(ケリパー)に光を注ぐ行為にほかならない。光は日にも火にもあてがわれる。容器が空であることは調停がおこなわれている状態である。
<殻>(ケリパー)は容器の物理的な限界にほかならない。このとき、<容器>とは潜在であり、<空処>とは調停であり<修正>とはプロセスである。これらが「世界」の暗喩を作りあげていく。