夏は来ぬ

季節柄もあり「夏は来ぬ」で再び唱歌ネタ。
NHKBSで放映された、新妻聖子という歌手が歌っている。初めて目にした名前である。どうやらミュージカル歌手らしい。少なくとも「夏は来ぬ」は安田祥子よりもいい。「夏は来(き)ぬ」というタイトルは「来(こ)ぬ」ではなく「来(き)ぬ」なので「夏が来た」という意。
「夏は来ぬ」は瀧廉太郎を見出した小山作之助の曲に佐佐木信綱の詞。明治29年(1896年)5月に刊行された「新編教育唱歌集(第五集)」に収録されたもの。これを見ても間違いなく唱歌は「日本らしさ」をフレームアップし、明治期の詩人や国文学者は最大のテクノクラート(専門官僚)だったことがわかる。


卯(う)の花の、匂う垣根に
時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ


さみだれの、そそぐ山田に
早乙女(さおとめ)が、裳裾(もすそ)ぬらして
玉苗(たまなえ)植うる、夏は来ぬ


橘(たちばな)の、薫る軒場(のきば)の
窓近く、蛍飛びかい
おこたり諌(いさ)むる、夏は来ぬ


楝(おうち)ちる、川べの宿の
門(かど)遠く、水鶏(くいな)声して
夕月すずしき、夏は来ぬ


五月(さつき)やみ、蛍飛びかい
水鶏(くいな)鳴き、卯の花咲きて
早苗(さなえ)植えわたす、夏は来ぬ