桂離宮に関してはいくつかの謎がある。まず第一の謎。海外で異常に有名であること。
桂離宮をテーマとしたいわゆる洋書はおびただしい数の本が出版されている。どうしてそんなに人気の建物なのか。日本の建築物としてはそれほど古いものではない。
法隆寺の金堂などに比べたら、比較にならないほど「最近の建物」である。第二の謎。基本的に庭と別荘である。贅を尽くしていろんな意匠を施しているのだが、残念ながらそれほど一貫性はない。
モダニズムに通じるものがどうしてあるのか。そして、第三の謎。
桂離宮を世界に知らしめた
ブルーノ・タウトの存在である。タウト(とその著作)がどうして建築の専門家の心に響いたのか。とにかくタウトの著作はつまらない。間違ってはいないが、まったくおもしろくないのだ。本書はこんな疑問に少しは答えてくれている。ただ、三つの謎は僕の中では残されたままだ。
伊東忠太が
岡倉天心の美術史観に影響されて、従来の「
日光東照宮絶賛」の評価を180度「罵倒」に近いものに変えたとされる考証はなかなか興味深かった。
桂離宮と
東照宮を比較することにそれほど意味のあることとは思えないけどね。